『天使の牙』と『天使の爪』は主人公が同じで先に『天使の爪』を読んでしまったので、ある程度の話はみえてしまった。主人公の河野明日香は犯罪組織の銃撃にあって死亡。しかし、一緒にいたのは犯罪組織クラインのボス・君国の愛人・はつみで彼女も銃撃を受けた。肉体を失った河野明日香、脳に銃撃を受けたはつみ。河野明日香の上司・芦田の判断により河野明日香の脳をはつみの身体に脳移植をする。そして、肉体と脳が別人の河野明日香がクラインに立ち向かう。河野明日香の恋人・仁王は明日香を失った悲しみで自暴自棄に。
死んだはずのはつみが生きていることを知った君国ははつみを取り戻そうとするが、そこに立ちはだかるのは一匹狼の仁王。仁王ははつみの脳が河野明日香だとは知らずに行動を共にする。河野明日香は仁王に本当の事を言えずに苦悩するが、一緒に行動する内に仁王の心に変化が現れる。
河野明日香は男勝りで身体もでかく女性っぽくない。はつみは誰もが振り返るような美人。その美人の身体を手に入れた河野明日香の苦悩。生まれ変わったらスタイルのいい美人になりたいというのを可能にしてしまった話だが、内容はまるっきりのハードボイルド。大沢在昌のこの手の作品は人がばんばん死んで。脇役に対する悲しみは置いてきぼりで、主人公に傾倒する。まあ、これだから一気に読めてしまうのかもしれない。
昭和8年、牡丹の彫り物をもつ夜鷹の女が、のちに日本のヤクザ社会を震撼させることになるひとりの男児を産み落とした。 浅草の侠客・浜嶋辰三のもとで育てられた神崎武美は、辰三の命を守るため幼くして恩人を手にかけ、やがて稀代の暗殺者へと成長してゆく。対立組織に追われ、ロスに潜入した神崎は、日本人街の母娘に導かれてキリスト教に接するのだが......。 ひとりのヤクザの生涯を描き、圧倒的な迫力と深い余韻を残す渾身の大河長篇。
伊集院静氏の久しぶりの小説は7つの短編からなる連作小説。主人公の神崎武美の存在は神ががっているので、他の作家が書けば「そりゃないだろう」と思うところだがこの作品は違うんだな。まあ、伊集院さんの作品はほとんど読んでいるので贔屓目に見てしまうところはあるけどね。それでも、僕は面白いと思うナ。
この作品は探偵畝原シリーズの6番目の作品。今回の依頼は詐欺氏に騙されそうになっている父親を何とか目を覚まさせて欲しいという息子からの依頼と夫の不振な行動を調査して欲しいという挙動不審の妻からの依頼。そして、キャバクラ嬢コンテストの為の上位4名の身辺調査の3つ。
それぞれの依頼内容からの絡みはあるようなないような。で、畝原が休みがないように微妙な時間差でいろんな事が起きる。登場人物と言えば畝原に探偵の手ほどきをした横山、その息子の貴。下半身不随になった元刑事の玉木、SBCの祖辺嶋などなどいつものメンバーと畝原の家族。
今回はキャバクラ嬢のインタビューから札幌の風俗事情が垣間見えて面白かった。東京でキャバクラと言えば綺麗な?女の子がドレスを着て接待してくれるところだけど、北海道ではキャバクラ=ピンサロで、東京風のキャバクラのことをニュークラブというとか。この辺は気になるのでネットで調べてみるとキャバクラ・ニュークラブ・ピンサロの区分けは曖昧な感じですね。これは実際に行って体験しないと分からないかも。
と話がそれたが、ネット上ではあまり今回の作品はウケが良くない感じがあるけど、僕は落ち着いた文章と世相を東直己流に突いているのがいいと思う。じっくりと楽しめる作品なので読んでみたいと思うひとはシリーズ最初の『渇き』から読むことをお奨めする。
この『疾走』は榊原健三シリーズの第3作目。健三が動くときは昔の恋人・多恵子かその息子の恵太の身に何かがあったとき。今回は前作『残光』から10年が経ち小学生になった恵太が危険な目に遭う。それを健三が助けるといういつもパターン。
今回は便利屋だけでなく、探偵・畝原シリーズから畝原が登場と東直己ファンにとってはワクワクする作品ですね。話の内容はちょっと突拍子もないですが、スピード感があって面白かったです。
王国記第7巻です。前編は太郎の育ての親・百合香の一人称で、後半はジャンの一人称。新しい展開としては教足教子が朧の子供を産み、名付け親は百合香で太郎の次なので次郎と。そして、百合香も子供を産むがこちらは花子と名付けられて太郎と同じ血が流れている。主人公は朧から太郎に移って行くのかが今後の展開の注目点です。
王国記の第6巻です。前編は赤羽先生の一人称で、後編は朧の一人称。着実に王国は作られつつあるけど、それは誰が誰の為の王国なのか分からなくなってきた。でも、この何とも言えない文章の流れが好きでこのシリーズは読んでしまっている。
北海道の麻薬取締官・大塚に、ロシアと地元やくざとの麻薬取引の情報が入る。現場を押さえるため万全の体制で臨む大塚。だが、ブツは押収したものの、麻薬の運び屋であるロシア人を取り逃がしてしまう。ロシア人は、銃撃による重傷を負いながらも、警官数名を素手で殺害し、町へ消えてしまった。あり得ない現実に、新種の薬物を摂取している可能性が考えられたが、犯人は逃走する際に一枚の絵を大事に抱えていたという。この絵は一体何なのか?
ちょっとオカルトが入っていますがなかなか面白い。カシアンというのはイコンに描かれた聖人のこと。このカシアンが4年に一度、2月29日にイコンから抜け出し災いをもたらす。その、カシアンが描かれたイコンが日本に入ってくる。憎しみが憎しみを呼ぶ。人の心にある憎しみに対して、世の中の憎しみに対して、カシアンと戦う大塚を通して人間の生きるすべを問いかけるような作品になっている。大塚がカシアンに呼びかける場面でカシアンがそれに応える場面では笑ってしまった。
タイトルを見ると齋藤道三を描いたのだろうと想像がつくけど、読み始めて誰の事を書いているのか分からなくなった。物語は刀工・櫂扇派を継承したおどろ丸が刀鍛冶青江派の裏青江衆に襲撃されるところから始まる。前半はおどろ丸の物語で、名を次々と変え斉藤性に変えたところで斎藤道三の父親と分かった。後半はおどろ丸の息子・庄九郎の出世物語だが父親とは対照的な性格と、サブキャストが充実しているので飽きず一気に読めてしまった。織田信長の義父が斎藤道三だから、それを考えるとおどろ丸の性格は隔世遺伝で信長に引き継がれた感じもある(勝手な想像で)。そういうことを考えながら読んでもこの作品は面白い。
タイトルで読まなかったのですが、レビューを見たらまあ読んでもいいかなって思って。「うたう」とは「証言する」ということでこう書けばなるほどですね。ええ、もっと笑える話だと思っていましたが、かなりネガティブな内容です。現役の警察官が警察本部の不正を議会で証言するというところにポイントを置いて同僚の死からうたう警官が狙われるというストーリー。目新しさはないですが、テンポのいい話なのでサクッと読んでしまいました。
この本を読んでから知ったのですが、前作『天使の牙』からの続編と言うことなので、これから読む方は前作を読んでからの方が話に入りやすいかも。主人公のアスカは脳移植を受けて別の女性の体を持つことになった。そして、同じような移植手術を受けたロシアの殺しやヴォルーク。ふたりに因果関係はないが、ふたりはコワルスキー博士の手によって生まれ変わった。一方は一度死んだが再び刑事として生まれ変わり、一方はロシアの元KGB幹部の手によって任意的に殺し屋から殺し屋に生まれ変わった。
迫力のあるエンターテインメント作品でどきどきします。脳移植を受けた人物が別人の体を手に入れるという非常に面白い内容。心と体の葛藤をもう少し描いてくれるとよかったかもしれないが、ストーリーのスピード感を考えるとあまり精神的な部分を描くと話が詰まってしまうのかも。とにかく一気に読めてしまいました。前作を読んでいないのでこれから読んでみたいと思う。
いよいよ柳沢吉保との対決も最終章に。だが、その前に立ちはだかるのは幕府には内緒で海外と取引をしている薩摩藩。その薩摩藩率いる軍船と大黒丸の戦い、次に待っているのは柳沢吉保率いる武川衆。次から次へと行く手を阻む者が現れるが、大黒屋・総兵衛の伝祖夢想流落花水流剣の前にばったばったと倒されてしまう。そして、柳沢吉保との対決に終止符を打つ。
全11巻ですが一気に読めてしまいました。細かいことを言えば突っ込みどころは満載ですが、こいういう話はテンポが大切ですからね。途中でネタ切れだったり、話を広げすぎてまとまらないところはありましたがそれでも面白いと思いましたね。
海賊カディス号との戦いで操縦不能となった大黒丸が行き着いた先は南の無人島。ここで、大黒丸を修理を修理し、次に向かった先は琉球ではなく西沙諸島。ここで、大黒屋としての取引先を広げて琉球に戻る。大黒丸は復活したが、カディス号も復活した。ただし、今回は対戦はなし。また、西沙諸島では次の展開(次シリーズ)につながるような仕掛けを残している。
大黒屋・総兵衛を乗せた大船・大黒丸が琉球に向かったがそこに現れたのは柳沢吉保に金で飼われたイスパニアの海賊ドン・ロドリゴが操るカディス号。百戦錬磨のカディス号が大黒丸に襲いかかるが、そこは訓練された鳶沢一族。激しい戦いは両者走行不能に。この後はどこに行くのか。
公家の娘を将軍・綱吉の側室にと我策する柳沢吉保。これを阻止しようと総兵衛が京へと上る。そこに現れたのが甲賀鵜飼衆に頭領・洞爺齋蝶丸。甲賀忍法対伝祖夢想流落花水流剣の戦い。とうとう忍者の登場で幻術を使う者が現れたよ。
大黒屋・総兵衛が考えていた大型船がついに完成。琉球に支店を作って海外の珍品などの売買を始める。段々とスケールアップしてきました。今回は大目付本庄豊後守勝寛の娘絵津が加賀前田家の子息との婚約し、加賀まで輿入れの旅にでる。その供をするのが総兵衛。柳沢吉保としては本庄家と前田家の婚約は自分にとって不利にな状況になるのでなんとしても阻止したい。ありがちな展開ですが、スペシャル時代劇ドラマといった感じで十分楽しめました。