この作品は探偵畝原シリーズの6番目の作品。今回の依頼は詐欺氏に騙されそうになっている父親を何とか目を覚まさせて欲しいという息子からの依頼と夫の不振な行動を調査して欲しいという挙動不審の妻からの依頼。そして、キャバクラ嬢コンテストの為の上位4名の身辺調査の3つ。
それぞれの依頼内容からの絡みはあるようなないような。で、畝原が休みがないように微妙な時間差でいろんな事が起きる。登場人物と言えば畝原に探偵の手ほどきをした横山、その息子の貴。下半身不随になった元刑事の玉木、SBCの祖辺嶋などなどいつものメンバーと畝原の家族。
今回はキャバクラ嬢のインタビューから札幌の風俗事情が垣間見えて面白かった。東京でキャバクラと言えば綺麗な?女の子がドレスを着て接待してくれるところだけど、北海道ではキャバクラ=ピンサロで、東京風のキャバクラのことをニュークラブというとか。この辺は気になるのでネットで調べてみるとキャバクラ・ニュークラブ・ピンサロの区分けは曖昧な感じですね。これは実際に行って体験しないと分からないかも。
と話がそれたが、ネット上ではあまり今回の作品はウケが良くない感じがあるけど、僕は落ち着いた文章と世相を東直己流に突いているのがいいと思う。じっくりと楽しめる作品なので読んでみたいと思うひとはシリーズ最初の『渇き』から読むことをお奨めする。
この『疾走』は榊原健三シリーズの第3作目。健三が動くときは昔の恋人・多恵子かその息子の恵太の身に何かがあったとき。今回は前作『残光』から10年が経ち小学生になった恵太が危険な目に遭う。それを健三が助けるといういつもパターン。
今回は便利屋だけでなく、探偵・畝原シリーズから畝原が登場と東直己ファンにとってはワクワクする作品ですね。話の内容はちょっと突拍子もないですが、スピード感があって面白かったです。
私立探偵・畝原シリーズ。前作『熾火』で大切に思っている姉川明美が傷つけられてしまった。そして、事件に巻き込まれた少女。今回はこの少女を引き留めるために畝原は姉川明美と結婚し、少女(幸恵)と養子縁組をした。姉川明美と結婚した畝原浩一は3人の娘の父親になった。新しい家族が出来たところから今回の話は始まる。
これまでの道警の不祥事などとは違い、今回は少年犯罪にスポットをあてた。と言ってもそこは東直己氏らしい話の展開で十分に読ませてくれる。もしかしたら、この作品を境に新しい探偵畝原シリーズが始まる予感がした。メールでのやりとりが増えてきたことは近頃の事情をふまえての事なんでしょうね。
私立探偵・畝原シリーズ。東直己は怒っている。腐敗した道警に、世の中に。探偵。畝原が大切に思っている姉川女史を傷つけてまで訴えたいことは何なのか。非常に辛く、苦しい小説です。特に畝原シリーズを読んでいる人は最期泣かずにはいられないでしょう。どうして、そこまで傷つける必要があるのか・・・。
榊原健三シリーズの第二弾。健三のかつての恋人・多恵子。健三は自がで出来る方法で彼女を守ろうとする。前作『フリージア』はヤクザの抗争に多恵子が巻き込まれそうになるのを守ったが、今度は多恵子の息子・恵太を守る為に健三が立ち上がる。
多恵子の夫・雄一の勤める丸高建設は警察・銀行・暴力団との癒着があり、その犠牲になった下請けの白崎が自棄をおこして丸高建設の磐元を射殺して、逃走。丸高建設の社宅に立てこもるが、そこに多恵子の息子・恵太がいた。そして、恵太が見た事は・・・。
今回は子供と一緒なので健三の派手はアクションシーンはない。どちらかというと腐敗した警察官僚に対しての不満や警察と暴力団の癒着に対して作者が怒っているように感じた。今回は「ススキノ探偵シリーズ」の“俺”が登場するなど東直己ファンにはたまらないキャスティングだが、話のテンポは悪かった。もっと、健三にスポットをあてて話を展開してくれたらと思うのは欲目だろうか。
私立探偵・畝原シリーズ。登場人物は前回と同じだけど、タクシー運転手の太田さんが年をとって覇気がなくなってきた。姉川女史とは発展はないが、お互い心を許しあえるようになって来た感じ。娘の冴香が中学生になってちょっとませたかな。
浮気調査を依頼した「妻」が実はとんでもない女でストーカー・クレイマー・恐喝と散々振り回される。この「妻」は何社も探偵社に浮気調査をしていて、そのことに気が付いた畝原が同業者に連絡を取るところから、バラバラ死体遺棄事件に巻き込まれてしまう。「知りたい」という感情が根っこにありどんどん深みにはまっていくのが畝原のいいところであり悪いところでもあるのだろう。毎日、嫌がらせのFAXが来るし、横山の家に死体の一部が置かれてそのおかげで横山の仕事もしなければいけなくなったりと。
死体遺棄の犯人探しにあぶちゃんこと高橋とホームレスに会いに行くが、この高橋のキャラクターがいい。「困ったもんだ」が口癖なんだけど、いい人なんだな。最初は違和感を感じていたが、読み進むうちに「困ったもんだ」がいい意味を出してくる。自分に対して「困ったもんだ」、相手に対して「困ったもんだ」、世の中に対して「困ったもんだ」と。人間関係を上手くつくれないけど、ある種の人達からは信頼されている。外見、挙動、発言だけで人を判断はしていけないということを言っているのかもしれない。
どうやら、この作品が東直己さんのデビュー作らしい。探偵とタイトルにはあるが、探偵と言うよりは何でも屋みたいだ。主人公の俺は28歳という設定なんだが、口調やら作品から漂う雰囲気は30代後半から40代という感じがした。ちょっとくたびれたおやじの匂いが感じた。
言葉は乱暴だし、会話ははちゃめちゃなんだけどユーモアがあって面白い。「俺」はカッコつけている割にはボコボコにやられてしまったり、くだらないジョークを飛ばしたりとハードボイルドにはほど遠い。そんな、ところがいいのかもね。
舞台は札幌。橘連合系を花岡組系は対立しているが、花岡組系は関西と手を組み橘連合をつぶしに掛かる。7年前にも関西は札幌に進出しようとしていた。その時、花岡組系の正心会を使って動き出したがひとりの男によって正心会はつぶされてしまった。その男の名は榊原健三。榊原はその事件後、足を洗って隠棲しているがそこに兄貴分の篠原がやってきた。篠原は榊原を担いで出世した経緯があり今度も担ぎ出そうとして榊原の昔の恋人・多恵子の写真を出してきた。
榊原健三は凄腕のヒットマンで淡々と目的の為に仕事(殺人)をこなしていく。その目的とは多恵子を自分を担ぎ出そうとしている人間をひとり残らず抹殺すること。冷酷だが、純粋に彼女の為だけにというのがこの作品を面白くしている。アクションシーンが鋭利なナイフのように一瞬で結末をむかえてしまうが、その一瞬が迫って来る瞬間がたまらない。文字を追って「来るぞ、来るぞ」と思いながら・・・。
先に『流れる砂』を読んでしまったので割とスッと話に入っていけた。今回も私立探偵・畝原がいきなり死体現場に踏み込んでしまい、事件に巻き込まれていく。畝原はめんどくさいことに巻き込まれる事を嫌がっているが、理性がそれを許さないのか自分から危ない目に合ってしまう。主人公なので危機一髪で助かるのだがなんとも危なっかしい。それと、娘の事が心配で身動きが出来ないなど妙にリアルなところもいい。おかげで、すっかり畝原ファンになってしまった。
畝原シリーズは『待っていた女』『渇き』『流れる砂』『悲鳴』『熾火』とあるので全部読破したい。
私立探偵・畝原シリーズの第2作目。第1作目を読んでいないので登場人物のつながりはよく分からないが、スカッとしたハードボイルドというよりもドロッとした人の嫌な部分をたっぷりとみせてくれる作品だった。小さな事件が発端で、関係ない事件をいくつも抱えて行くうちにどこかで繋がっているというわかりやすい話の流れだが、登場人物に嫌なヤツが多い。主人公の畝原もいい人ではないし、探偵仲間の横山は口も態度も最悪、犯罪を犯している本村康子においては背筋が冷たくなるような絶対関わりたくないタイプの人間だったり、まあ人物描写が優れているとは思えないけどジワジワと入り込んでくる。
事件が解決するときは一気に瓦解するわけだが、謎解きが少ないのはちょっと不満だな。でも、この前後作は読んでみたいと思う。じゃないとスッキリしないしね。